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【2,256の出会い】岡山県女性創業サポートセンター

『岡山県女性創業サポートセンタ―』での任期が2021年3月末日をもちまして終了いたしました。2015年4月当センターの立ち上げ期(平成27年度)から携わらせていただき、2021年3月(令和2年度)まで、実に6期6年間。多くの、しなやかに生きる女性たちに巡り合いました。6年間の当センターで過ごした時間すべてが、貴重な瞬間でした。

当事業には、3つの柱がありました。まず個別相談業務、次に創業塾、そしてセミナー・交流会です。6年間で、時代も変化しました。人も変化しました。3つの柱のやり方も変化し続けました。2015年第1期から、此処に、あらためて振り返りたいと思います。

 

【2015.4-2016.3(平成27年度)】当年6月、岡山県女性創業サポートセンターは、岡山県男女共同参画推進センター(ウィズセンター)内に設置されました。当時では、女性の創業を支援するための機関は、他県にさきがけた取り組みだったと認識しています。岡山県の事業であり、公益財団法人岡山県産業振興財団が受託し、運営するものです。私の使命は相談員としての、個別相談対応、創業塾、セミナー交流会の企画運営でした。岡山県の新たな取り組みとして注目を集め、開所式には多くのメディア陣が駆け付け、報道されたことをよく覚えています。

■事業の目的と意義を探求

当年6月開設までの2か月間、センター設置のための準備が急ピッチで繰り広げられました。県下女性の創業機運醸成、創業の総合的支援という大義があるなか、私は展開する事業の、自身の役割を深く掘り下げ、あるべき姿を描き、準備にあたりました。

「利用者の方(=創業を目指す女性、創業前後の女性、女性起業家)のための、利用者の方の課題解決やビジョン達成の確実性を高めるための機関であるべき」だと、強く心に刻みました。開設直後から、実にさまざまな方々が、それぞれの想いや課題を抱えてご来所されました。

私が当センターの意義を実感するのに、開所後時間を要しませんでした。なかには、「男性も女性も創業の課題は同様にあるのに、女性に特化しての支援は不公平では」という声も聞こえてこなかったわけではありません。実際やるべきことは同じです。しかしながら、多くのご相談に当たるなか、背後に根強くある社会的課題を、あらためて身をもって実感したのです。社会人としてスタートをきった後の女性特有のライフイベント等による仕事からの離脱率、そしていまなお少なくない仕事復帰の障壁、企業内での女性活躍に関する障壁……等よく知られている社会的課題が根底に潜んでいました。女性活躍推進法が施行される前年にあたるこの年、それは現在(2021年)よりもまだ顕著でした。加えて、「女性の創業」に関して、女性の声を聞き入れてもらいにくい(と感じる、も含めて)風土が、まだその当時はいまよりも濃く存在していたように感じます。「社会が生み出した課題は、社会が解決のための体制をつくる」ことに、当事業の意義をあらためて実感することになったのです。

■確実に増え続ける相談者、創業塾受講者

基本的に「週2日」の開所日に、開所初年度10か月間で受けた相談件数は、194件でした。開所日のうち創業塾は初級コース、中上級コース各5日間。ともに、初年度から15名の定員枠を大幅に超える申込者があり、増枠しての開講でした。自らの進む道に、光を求めて来所される方々とともに、当事業はまさに、出航したのです。

相談件数:194件、創業塾(初級・中上級計):実数44名、セミナー&交流会(2回定計):実数94名

 

【2016.4-2017.3(平成28年度)】

■一貫したポリシー

2015年開設時より、どうしても譲れないポリシーがありました。重複しますが、「利用者の方のための、利用者の方の課題解決やビジョン達成の確実性を高めるための機関であるべき」ということです。機関のためではなく、当然私のためでもなく、あくまでも利用者の方々のための機関であること、という点です。もちろん実績は重要なファクターです。数値は大切な評価基準であり、改善のための重要な判断材料です。しかしならがら、かねてより一貫してご関係者の方々へもお伝えしてまいりました。「数字づくりのための仕事はしません。」と。

■女性起業家コミュニティ誕生のはじまり

開設2期目に入ると、口コミによる窓口相談者、創業塾生、そしてセミナー&交流会への参加者が、増加の一途をたどりました。このころから、窓口相談予約は1か月先、長い方で2か月先まで入る状況が生まれました。創業塾はリリース後すぐに満席、定員枠を増席しての開催、そしてセミナー&交流会も、直ぐに満席の状態が慣例となりました。そして、やはりこのころから、利用者の方々の発信による女性起業家コミュニティが、地元岡山の地で、大小問わず見かけられ始めたことを記憶しています。コラボでのビジネスやイベント、そしてお仲間同士での学びやサポートなどが、巷であちらこちらに誕生していました。互いに刺激し合い、支え合いながら前進されるそのお姿に、まぶしさを感じることがしばしばでした。その傾向は、現在(2021年)もなお、続いているように感じています。

相談件数:239件、創業塾(初級・中上級計):実数43名、セミナー&交流会(2回定計):実数93名

 

2017.4-2018.3(平成29年度)

■毎年度違うやり方の創業塾とセミナー&交流会

岡山県で定着した「岡山県女性創業サポートセンターの創業塾」。しかし、毎年同じやり方をしていたわけではありません。軸はそのままに、プログラム編成等細部にわたり毎回改善を繰り返しました。その姿勢は最終年度まで崩されることはありませんでした。志を共にしてくださった岡山県、岡山県産業振興財団のご関係者、賛同してくださり快くご協力頂いた専門家、みなさまに感謝してやみません。

「実」に重きを置いた当センターの創業塾は、受講生の方々にとっては、時には厳しかったかもしれません。しかし受講後事業を継続されていくなかで、お役に立てていることを願い、信じています。

■利用者層の厚み

開設後3年目を迎えるころ、当センター利用者の方々の層に、厚みが生じてきました。個別相談の方は、創業に興味を漠然と抱えている方、創業計画中の方、創業直後の方、そして起業家の方までと、幅広く課題も様々でした。もちろん、業種も様々、事情も様々、実に多様性ある方々のプラットフォームとなったのです。年に2回開催するセミナー&交流会は、そんな多様な起業家と創業を目指す人たちの、絶好の交流や意見交換の機会・場となり、常に熱気に溢れんばかりでした。あらためて、女性たちのパワーを感じる、私も大好きなイベントでした。毎回全国規模で活躍されるすばらしい女性起業家を迎え、勇気と未来への希望に包まれる、熱いイベントへと成長しました。

相談件数:271件、創業塾(初級・中上級計):実数41名、セミナー&交流会(2回定計):実数91名

 

2018.4-2019.3(平成30年度)

創業機運醸成賞表彰式

■創業相談の事業種に変化

多種多様な相談に日々従事するなか、創業相談事業種に変化が見えはじめました。社会的課題解決に関する事業でのご相談が増えてきたことです。私なりの分析に過ぎませんが、大きく二つが考えられます。一つめは「SDGs機運が醸成されはじめたこと」、二つめは「身近に女性起業家が増えてきたこと」です。少子高齢化に伴い喫緊の課題解決の必然性を増す介護問題、そして教育現場や家庭においての子育てや教育に関する様々な課題、多様性ある働き方に関する課題、地域活性化に向けての課題など、私たちのくらしに沿った課題解決のための事業相談が増えてまいりました。女性視点ならではの事業展開と、それをどのように収益化していくかのビジネスモデルの構築は、せめぎ合いでもあります。身近なところから、女性起業家が誕生した結果、身近にロールモデルを見出すことによって、想いの具現化に挑戦する人たちが増えてきたのではないかと、分析しています。「この必要とされているサービス、無いなら私がやる」。その挑戦は、尊く、称賛されるべきものだと感じています。起業家は、変化を起こす人なのですから。一方、これらの課題解決のためには、社会の受容力、そして社会構造の変革も必要なのだと感じています。

■「平成30年度創業機運醸成賞」個人受賞

名誉なことにこの年、中小企業庁より、「平成30年度創業機運醸成賞」を受賞いたしました。個人受賞ではありましたが、決して私一人ではいただけない賞です。ご関係者の大きなお支えがあっての受賞でした。ひたすら本質を追求しながらの任務遂行でしたが、「それでよかったのだ」と、ご褒美をいただいたような嬉しい気持ちと、深い感謝の想いでいっぱいでした。

相談件数:296件、創業塾:実数21名、経営塾※当年、利用者の層に対応し経営塾を実施:実数14名、セミナー&交流会(2回定計):実数89名

 

2019.4-2020.3(令和元年度)

起業家の課題の分析

多くの起業家の課題に向き合うなか、私独自の「創業フェーズ」が体系化されました。それぞれの段階の、課題と優先順位があります。たとえば、まだ創業するということに対して、絶対的な意思決定を下すことができていないフェーズの方には、それまでの経緯、想いや環境などを丁寧に傾聴し、志の確認を共にしていきます。あるいは、具体的事業計画を策定するフェーズの方には、「事業の早期安定化と事業の継続」を視野においての事業計画作成が重要です。このフェーズでは、最も見逃されている視点でもあり、最も注視しなければいけないことだと強く感じました。なぜならば、創業者にとって、ある意味有利な外部環境(創業機運や様々な創業支援等)が整っているなか、創業を具体的に計画している方にとっては、「創業する」ということよりも、「事業を継続させ、成長させる」ことのほうが、より難しく、より努力を要することだと感じたのです。現実の壁にぶつかるその前段階、つまり創業計画の時から、視座をそこへ置き、プランニングすることの重要性をお伝えしました。私が考案した事業早期安定化と継続のための実質的な事業計画作成法を、必要に応じて、適用してまいりました。

フェーズは、細かく分かれます。そして、それぞれの文脈も様々です。しかしながら、それぞれにかけがえのない人生の選択であり、真剣勝負です。その重みをしっかり受け止め、お一人お一人に向き合わさせていただきました。どの段階にいる方々にも、共通して心掛けたことは、ご自身で気づき、解を見出し、ご自身で選択していかれることを主軸とすることです。

ダイナミックなセミナー&交流会と、プレゼンテーション大会の開催

50名定員のセミナー&交流会でしたが、すぐに満席締切になってしまうことから、当期は定員を増やし、大きな会場での開催を試みました。いつもより、すこし華やかな会場で、ご参加の方々にも喜んでいただけました。ご参加者の嬉しそうな笑顔が、何よりの励みです。そして、2月開催のセミナー&交流会は、「プレゼンテーション大会」へと企画を変更しました。創業塾の最終日に、受講生の方々はビジネスプランのプレゼンテーションを行います。最初は緊張されていた方々も、どんどん磨かれ、やがては、「プレゼンしたい!」に変化していくのです。より多くの方にプレゼンテーションが出来る機会を創出したいと考え、企画しました。人に伝えることの大切さとよろこびを感じ、いきいきと発表される雄姿はたのもしく、「人の可能性」をひしひしと感じる実りある時間でした。さらに、その雄姿を目の当たりにし、みつめ、「私も!」と創業や新しいことへの挑戦をしたいと感じる人たちが誕生する、「活きる時間」となりました。

相談件数:301件、創業塾(初級・上級計):実数46名、セミナー&交流会:実数70名、プレゼンテーション大会:実数37名

 

2020.4-2021.3(令和2年度)

コロナ渦のなかで

新型コロナウィルスによるパンデミック、緊急事態宣言とともに幕開けた令和2年度でした。状況下何ができるか、何をすべきか、そして何よりも「スピード」を念頭に、対応を心掛けました。しばらく、センター窓口も来所対面面談はクローズとし、電話やメールだけでの対応へ。そのなか、ご関係者の方々とも相談しながら、「オンラインによる相談」の環境を早急に整えました。5月連休明けからオンライン相談を開始、当面の間窓口へお越しいただくことをご遠慮いただき、電話またはオンラインによる対面相談で対応をいたしました。

恒例の7月開催のセミナー&交流会は、中止へ。創業塾開催も危ぶまれました。参加者数を少数に限ってではありましたが、開催できたことは、とても幸運でした。安全確保のための細心の注意のもと、無事に開催することが出来ました。

感染予防対策のため、例年より約半数の受講生の方々。なんて、みなさま熱心だったことでしょう。コロナ渦のなか、熱心に受講に来られる創業塾生の方々、そして相談者の方々は、「このような状況の中、やるべきことは何なのか」真摯に向き合い、努力をする方々でした。厳しい外部環境下果敢に挑み、ステージアップをはかる人たちに出会い、私も多くのエネルギーをいただきました。

■女性創業オンラインセミナー

当初7月のセミナー&交流会での講演依頼をしていた女性起業家がいらっしゃいました。2020年2月から、お願いしていました。実に素晴らしい方です。対面が不可なら、必ずオンラインを活用してでも、お話をみなさまに届けたいと思いました。およそ1年間、状況を見守りながら連絡を取り合いました。そして、2021年2月、当センター最初で最後の「女性創業オンラインセミナー」を開催したのです。1年越しに実現したセミナー、画面越しから熱意の伝わる唯一無二の講演でした。

相談件数:213件、創業塾(初級・上級計:実数22名、セミナー&交流会:実数35名

 

 

以上が6期の振り返りです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

6年間無事に任務を成し遂げることができたのは、すべてみなさまのお支えのおかげです。ありがとうございました。

そして、出会った多くの創業を目指す方と起業家の方へ、みなさまの勇気と挑戦とご努力に、心からの敬意を表します。

交わうことができた「2,256の人生の瞬間」、輝く星。未来の空までずっと照らし続けますように。

 

どうか、変化を起こし続けてください。

 

感謝を込めて

村上紀子

 

 

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起業を目指す方・起業家の方へ向けた記事「Entrepreneurship」

 

 

Editor’s note; 2021年3月30日最後の相談日。任期終了情報を公示前に知られた情報通の創業塾生の方々が、サプライズで届けてくださいました。

お心のこもった身に余るお言葉。一つひとつを大切に、胸のなかへ。「私に似合う」お花を選んでいただいたとのこと。最後のご相談を終えた帰り際、玄関で待っていてくださいました。そして、やさしいメッセージの数々。

 

みんな、大好きです。

ありがとうございます。再会を、たのしみに。

 

 

 

Editor’s note;021年3月29日。岡山県横田副知事へごあいさつ。

ずっとお支えいただいた岡山県庁のみなさま。6年間を通し、真摯に、献身的に、様々な取り組みに向き合われるみなさまのお姿に触れさせていただきました。お支えいただいた岡山県庁のみなさま、そして公益財団法人岡山県産業振興財団のみなさま、ありがとうございました。