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【人材戦略】新たな「どうやって」を創り出す

日本政府が「人的資本経営で変革を」と提唱し、企業における賃金や人への投資への関与(税制等)も顕になってきました。今後、人的資本の可視化の具体的施策等、ますます取り組みが進んでいきそうです。本来企業は、(政府に主導・干渉されることなく)自らの展望と経営判断に従って、賃金体制や人材戦略を構築・推進するものであり、またそうあるべきと考えますが、人的資本可視化に関する世界の動向、年収・技術やスキルに関する日本の傾向や現状を受けての日本政府の取り組みであると捉えています。経済産業省「未来人材会議」の2022年5月中間とりまとめ資料※1では、「企業は人に投資せず、個人は学ばない(資料1から引用)」日本の現状が示されています。

一方、「人に投資する企業」も、「学ぶ個人」も存在しています。「変革の時代」を自ら認識し、やるべきことに取り組む企業も個人も存在していると思っています。政府による施策が講じられるとはいえ、今後ますます二極化が進んでいくのではないでしょうか。人に投資する企業はますます投資し、学ぶ個人はますます学び続けるのだと思います。

■人に投資しない企業

人への投資が成されていない企業の現状は、「投資したいが、していない」か「投資したくなくて、していない」に大別されます。その理由としてあがることは、

経費がない、時間がない、有効なやり方がわからない、優先順位が低い、そして人材が常に流動している(流出が多い)ため無駄になる、などです。事実、人材の採用後数年内での退職による、企業の損失は小さくはありません。しかし、人に投資されていない結果、人材流出も後を絶たないばかりか、人材確保すら厳しくなるといった、悪循環が浮かんでみえます。

■理念はあるが機能しない組織

昨今では、「パーパス経営」という言葉もよく用いられ、経営理念や企業の存在意義の明確化の重要さは広く認識されています。理念、パーパス、ミッション、ビジョン、バリュー、その言葉の定義や意味合いの違いはなんであれ、企業の大目的や使命を明確化する企業が多く存在しています。とても重要なことであり、礎でもあります。

しかしながら、明確な理念が存在していても、働く人々が一丸となりその理念に向かっている組織ばかりではありません。経営戦略が機能していないからです。残念ながら、不正や事故のニュースも後を絶ちません。人材戦略は、経営戦略の要であるにもかかわらず、「企業は人に投資せず」という現状もあります。人の力を十分活かすことが出来ずにいる企業が少なくないのではないでしょうか。

理念があるのは大前提です。理念を達成するべく、営みが機能する姿を実現されることが望まれます。

■組織の取り組みはすべて循環している

組織における取り組みは、すべて循環し、影響し合っています。「人への投資」だけ行えば、経営がうまくいくわけではありません。人事制度や給与体系だけ改正しても、採用制度だけ変更しても、人材教育研修だけを実施しても、それだけではうまくいきません。また、多様性ある人材を採用しても、活用できなければその意義を達成できません。DX化を導入するだけでは、生産性も上がりません。すばらしいルール、制度が敷かれていても、真の公正が浸透していなければ、不正は無くならないでしょう。

組織のなかで、それぞれの取り組みがすべて影響し合っています。そこにいる人々もまた、相互に影響し合っています。有機的につながり合い相乗効果を発揮できる場合もあれば、その逆の場合もあり得ます。人材戦略が、経営戦略である所以であり、包括的取り組みが求められる理由です。

激動の時代、先が読めない時代と叫ばれ、ダイバーシティ経営、女性活躍推進、働き方改革、賃金アップ、テレワーク推進、DX化、そして人的資本経営……、続々と登場する施策に押しつぶされそうになるかもしれません。絶えず新たなキーワードが次の言葉に置き替わっていきます。

しかし、本質をみることができたなら、とてもシンプルです。成すべきことも、視えてきます。目的の明確化は大前提、それを「どうやって」実現していくのか、創り出さなければいけません。最善策を創り、行動していくのみです。

理念の明確化におわり、カタチだけの「理念」や「パーパス」になっていないでしょうか。

「どうやって」を新たに創り出し、実行するからこそ、「人的資本経営で変革を」も成立するのだと思います。人に投資する企業は、「どうやって」実現していくのかを常に検証し、創り、そして行動しています。そして学ぶ個人は、「どうやって」実現していくのかを、創り出すことができる人なのです。

 

村上紀子

・関連記事 【人的資本経営とSEE理論】経営戦略としての人材戦略

・参照※1) 経済産業省「未来人材会議」https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/mirai_jinzai/index.html