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【人材開発】「企業は人に投資せず、個人は学ばない」といわれる時代のなかで「学ぶ人」

「企業は人に投資せず、個人は学ばない」※1と言われる昨今ですが、本当に人は学ばなくなったのでしょうか。「学ぶ人」は希少な存在になってしまったのでしょうか。だとしたら、「学ぶ人」はどのような人なのでしょうか。

 

■人への投資

日本政府は「人的資本投資」や「リスキリング 教育」、「 リカレント教育」を提唱し、大企業を中心に人材への投資や育成の在り方が見直されています。しかしながら、「人的資本」への投資や視える化への取り組みに活発さを増す企業がある一方、従来通りの「人材教育研修」のみにとどまっている企業も多いのではないでしょうか。そのうえ、「人材育成研修は新卒新入社員だけに行う」という企業も少なくないように見受けられます。

「人的投資」は、直接的な知識・技能教育だけではなく、金銭的または情緒的価値に基づく投資(労働契約・労働環境)、外部能力獲得への投資、あるいは経験・機会への投資等様々な形での投資が考えられます。

「投資しても直ぐに離脱していくから投資しない」という閉塞感にとらわれることなく、いまこそ本質的な人への投資が企業には求められています。本質的な人への投資とは、機能する学びの機会、有益な経験の機会、必要な能力の補充、そして相互納得に基づく労働契約などが挙げられます。自社の特性や環境に沿った、人への投資の在り方を、根本的に見直すことが求められているのです。

学ぶ人

企業が本質的な人への投資を行っても、学ぶ意志がない個人には、反映されません。逆に言えば、学ぶ意志がある人は企業(他者)に機会を与えられなくても、自ら学び、成長していきます。(それを理由に、企業は投資しなくても良いと考えるのは短絡的です。)

「学ぶ人」と、「学ばない人」の相違点は何でしょうか。「学ぶ人」は、なぜ学ぶことができているのでしょうか。

学ぶ人の行動特性

  1. 自分のありたい姿を、描いている(Vision)
  2. 自分の出来ていないことが、わかっている。(Observation, Evaluation, Recognition)
  3. ギャップを埋めるための努力(・工夫)をする。機会を掴む。具体的には、情報収集、選択、行動。(Selection, Decision, Action)

一言でいえば、「自分で自分に投資する人」です。

  • 何を、学ぶのか。
  • どのように、学ぶのか。
  • その手段は、最適なのか。
  • そのために、必要な資源・環境はなにか。どうやって、手に入れるか。

学ぶことを選び、「自分で、自分に投資する」最適な機会を創出しているのです。(Creation)

 

「戦略的学習力」という言葉がきかれるようになりました。オックスフォード大学マイケル・オズボーン教授の論文(2013)で、2030年に必要とされるスキル中第1位として提唱された概念です。「新しいことを学び/教えるときに、状況に適した学習方法/指導方法と手順を選択し、実践できるスキル」とされています。まさに、「学ぶ人」は「戦略的学習力」が高いと言えるのかもしれません。

 

■自己の可能性への信頼と挑戦

投資には、リスクがつきものです。投資する際には、投資先の可能性を十分評価します。一方、リスクを検討する時、選ばなかった時のリスクも視野に入れるべきです。

自分で、自分に投資する人は、自分の可能性を信じることができる人です。「学ぶ人」は、自分の可能性をどんどん伸ばしていくことができるのです。

さらに、「学ぶ人」は未だ見果てぬ世界があることを認識しています。未知の世界へ果敢に挑戦していく行動力で、トライ&エラーを重ねながら、成長域を自ら拡げていくのです。「無理だから」「ビジョンもなければ、学びたいこともない(わからない)から」と、決めつけてしまうことなく、関心のアンテナを張り巡らせています。

 

果たして、そのような個人は本当に減少したのでしょうか。それとも、もともと少なかったのでしょうか。時代が、あるいは社会が、そうさせたのでしょうか。社会や他者のせいにするのは、簡単です。

企業研修という同一環境下においても、「学ぶ人」の吸収力と行動力は一目瞭然です。「企業は人に投資せず、個人は学ばない日本」と言われようが、どのような時代であろうが、「学ぶ人」にとってはまったく関係のないことなのです。

「学ぶ人」は着々と自らの意志で、学ぶ機会を活かし、活き活きと成長していきます。

 

■最後に

「山は樹を以て茂り、国は人を以て盛なり」とは、有名な吉田松陰の言葉です。優れた人の力が国や組織を富ませるのだと、古から言われてきました。優れた人とは、自ら志をたて、学ぶ個人を指していると考えます。

また、次の言葉も残しています。

「国にとって人は水源であり、木の根である」と。

「企業は人に投資せず、個人は学ばない」といわれる時代において、とても意味ある言葉だと感じます。

 

「企業は人に投資し、個人は学ぶ」姿を実現するか否かは、私たち一人ひとりの行動にかかっています。

 

村上紀子

 

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