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【組織開発】「ダイバーシティ」が活かされるための3つの条件

■「ダイバーシティ」が活かされるための3つの条件

昨今では、日本においても、ダイバーシティ・インクルージョン(D&I)に取組む企業も増え、認識も随分浸透してきました。

“組織において、「ダイバーシティ」は本当に必要か?” ―いまさら何を、というような問いかもしれません。

この問いに対する筆者の意見は、「yes」です。ダイバーシティの重要性を提案し、D&I支援を手掛けさせていただいてもいます。

組織において「ダイバーシティ」は必要である、の立場です。しかし、条件が伴います。

 

条件とは、

1.多様な人々の、多様な価値観、多様な思考や意見が、自由闊達に集まること

2.それらが、十分議論されること

3.その結果、合意形成されること(意思決定に反映されること)

 

ダイバーシティに取組む企業も、人びとの認識も増加しましたが、この3つの条件が満たされている組織はまだ、多くないように感じています。

多様な人々が集まっているだけでは、残念ながらD&Iは実現できません。

 

■「コグニティブ・ダイバーシティ」(認知的多様性)の重要性

国籍、性別など属性に関する多様性が「デモグラフィック・ダイバーシティ」と呼ばれるのに対して、経験・スキル・思考特性など見えにくい要素の多様性は「コグニティブ・ダイバーシティ」と呼ばれます。また、「コグニティブ・ダイバーシティ」を実現することが、イノベーションにつながりやすいとも言われています。

ようやく「デモグラフィック・ダイバーシティ」が浸透してきた日本企業は、D&Iを通して経営的成果を上げるまでには、まだ道半ばといえるのかもしれません。

 

内閣官房により提示された人的資本における開示指標項目(「人的資本可視化指針案」※参照1)/ 7分野19項目)にも「多様性」分野があります。その項目は、「ダイバーシティ・非差別・育児休業」となっており、やはり「デモグラフィック・ダイバーシティ」に偏っているようです。

真のD&I には、可視化されにくい「コグニティブ・ダイバーシティ」の実現がキーポイントになってくると実感しています。

まさに、先に述べた3つの条件が求められているのです。

 

■多様性受容のコンフリクト

“組織において、「ダイバーシティ」は本当に必要か?”―の問いに対して、

「必要でない」と意見する人も、なかにはいることでしょう。

「現社会の主流だから」というだけの理由で、肯定する人もいることでしょう。

しかし、「必要でない」とする意見も、一つの意見として先ずは尊重されるべきだと思えます。

まさに多様な意見が、多角的視点から、論理的に、十分議論されることが大切なのではないでしょうか。意見を述べ合い、合意形成を図っていくことが大切なのだと考えます。

 

コンフリクトを乗り越えてこそ、真の合意形成は成立します。

D&Iもそうあるべきだと思います。

 

無意識の偏見が大きな壁となり、思うようにD&Iが推進されない状況が多くみられます。

一方、「自分は十分多様性を理解している」「自分は偏見など持っていない」と多くの人が感じています。

「自分の内側に、気付いていない偏見があるかもしれない」「固定観念があるかもしれない」「理解不足があるかもしれない」と自認し、想像力をはたらかせることから、建設的な議論が育ちます。

 

多様な人々が集まっているだけではなく、多様な価値観や思考が建設的に交わることによってこそ、D&Iの意義が生まれるのです。

イノベーションにはコンフリクトが伴います。だからこそ、トップリーダーや推進を担う人たちの、覚悟が求められるのです。

そして、忘れてはいけないことは、「D&I は目的ではなく、手段である」ということです。

 

村上紀子

 

※参照1) 人的資本可視化指針(案)/付録1 , 非財務情報可視化研究会, 内閣官房(2022.06.20)